はじめに
2026年7月23日、腾讯(Tencent)がAI開発組織の再編を断行した。混元(Hunyuan)多模態モデル部門与大言語モデル部門を合併し、新組織「基礎モデル部」を発足。統一管理者として就任したのは、「95後」(1995年以降生まれの30歳前後)姚順雨・首席AI科学者だった。
この再編は2025年4月末に両部門が分離してからわずか約15年後の再統合。前例のない速度での「分割→統合」サイクルは、腾讯のAI戦略が急速に変化していることを如実に物語っている。
1. 背景──なぜ「分割」したのか、なぜ再び「統合」したのか
2025年4月の分割
2025年4月末、腾讯は混元大言語モデル(Hunyuan LLM)研發体系を全面重構した。算力・アルゴリズム・データという3つのコア板塊,围绕这三个核心领域进行全面重组,成立了两个新的独立部门。这次分割は、各モダリティの「專注」と「専門性」を追求するための組織設計だった。
2026年7月の再統合
分離からわずか15年後の統合発表。唐不住了と受け取られた向きも多い。合併理由として腾讯官方は「モデル研發と協調効率のさらなる向上」を挙げ、「全模態モデルの知能上限の探求」を目標として揭げた。
これはつまり、テキスト・画像・動画・音声・3D生成といった複数モダリティを統一的に扱える「真の全模態基盤モデル」の開発加速を優先課題として位置づけたことを意味する。
2. 姚順雨──「95後」首席AI科学者が示す Tencent の世代交代
今回の組織再編で特に注目されるのは、統一管理者に就任した姚順雨の経歴だ。
姚順雨は「95後」——1995年度以降生まれの世代で、現在30歳前後ながら腾讯の最高位AI科學家職に就いている。
複数のメディア報道によると、姚順雨の管理範囲は混元基礎モデル部に留まらず、7月に正式上架した大言語モデル「Hy3」の戦略的意思決定も含む。Hy3は同サイズモデルより強力とされ、パラメータ規模2~5倍の旗艦モデルに匹敵する性能を持つ。
3. Hy3──統合の背景にある「切り札」
Hy3の性能
2026年7月、腾讯が正式リリースした大言語モデルHy3は、統合決定の背景にある「切り札」の一つだ。
| 項目 | Hy3 スペック |
|---|---|
| 総パラメータ | 295B(2950億) |
| アクティブパラメータ | 21B(210億)──MoE採用 |
| 最大入力 | 192Kトークン |
| 最大出力 | 128Kトークン |
| 思考モード | no_think / think_low / think_high の3檔 |
MoEアーキテクチャにより、アクティブパラメータは総パラメータの約7%に抑えられながら、同サイズ或少パラメータモデルに対する性能を達成。think_highモードでは複雑な推論タスクが大幅向上する設計だ。
接入先──既に腾讯の「屋台骨」に
Hy3は以下の腾讯主要プロダクトに既に接入済みで 用户のいない状態ではない:
- WorkBuddy / CodeBuddy:企業向けコラボレーションツール
- 元宝:混元AIアシスタントアプリ
- Marvis:AI驅動客服(顧客サービス)
- ima:知的生産プラットフォーム
これは、Hy3が「研究段階のモデル」ではなく、実際の製品に組み込まれた実戦モデルであることを示している。
4. 全模態戦略──「統合」が示す3つの戦略的意思
① 全模態モデルの追求
統合後の基礎モデル部の使命は「全模態モデルの知能上限を探る」ことにある。Hunyuanは既に画像・動画・音声・3D生成モデルを含む完全なモデルマトリクスを構築しているが、部门が分かれていたことで横断的な技術統合が制約されていた可能性がある。
統合により、テキストと他のモダリティの更深层次の相互作用が可能になる。
② 「核心技术自研+先進開源」方針の貫徹
2025年4月の分割当时、腾讯は「核心技术自研+拥抱先进开源」という多モデル戦略を表明した。これは、独自モデルの開発を進めると同時に、DeepSeek・GLM-5.2など優秀なオープンソースモデルも積極的に導入・活用するという方針だ。
統合はこの戦略を実行に移す組織的基盤の強化と解釈できる。
③ 推理需要の爆発的増加への対応
2026年に入り、OpenAI GPT-5.6シリーズ、Anthropic Claude Fable/Opus、DeepSeek V4など、各社が大規模推論モデルを展開する中、推理(Reasoning)负载が爆発的に増加している。
基礎モデル部の統一管理は、推論能力の研究開発を組織的に加速するための布石でもある。
5. 中国BATのAI競争──最新の組織動向
今回の腾讯の再編は、中国BAT(百度・Alibaba・Tencent)間のAI開発競争の最新局面としても興味深い。
近年、各社が組織・戦略を急速に調整している:
- 百度(Baidu):ERNIE Botの継続改良とERNIE 4.0の展開
- Alibaba(阿里):通義千問(Qwen)系列开源戦略の成功、Qwen-3.8-previewの展開
- Tencent(腾讯):混元系列の継続投入、組織架构灵活調整、Hy3を軸とする実用化加速
腾讯の財務データによれば、2024年の研発投資は706.9億元に達し、資本支出は前年比221%増の767億元を記録。2025年も投資規模拡大が予想され、基礎モデル研究の加速物质的裏付けとなっている。
おわりに──「分割」と「統合」の間で見える、AI研發組織の力学
15个月の間に「分割」→「統合」を断行した腾讯の事例は、AI研發組織管理の難しさを浮き彫りにしている。
分割好处は「專注」と「専門性」だが、部门間の技術統合が困難になる。統合好处は「横断的協調」と「資源の集中」だが、部門が大きくなりすぎて柔軟性が低下するリスクがある。
基礎モデル部が発足した今、腾讯が「全模態」という新たな課題に対してどちらのバランスを選択するか、注目に値する。
2026年下半期の中国AIモデル戦において、腾讯がHy3を核とする基礎モデル部をどう展開するか、その行方が中国AI産業の次の転換点を左右するかもしれない。
本記事は、界面新闻(2026年7月24日)、钛媒体、腾讯云公式情報(2026年7月)に基づいて作成。组织詳細は Tencent 公式発表に基づく。